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潮の発生などが相次いで社会問題となった。
さらにノルウェー沿岸部の海洋学的な特徴の一つとして挙げられるのは、フィヨルド(峡湾)の存在である。ノルウェーの沿岸とくに西海岸には、氷河によって浸食された深い谷に海水が進入して狭長で水深の深い入江が多く、フィヨルドと呼ばれている。フィヨルドの出口にはしばしばレキ質ないしは岩石の高まり(シル)があり、フィヨルド内の海盆よりもかなり浅くなっている(図6)。たとえば代表的なフィヨルドの一つであるソグネフィヨルドでは、シルの深さは150m程度であるのに対してフィヨルド内は1200mを越える。したがってフィヨルド深層水の海水交換速度は概して小さく、フィヨルドを魚類養殖場その他に利用しようとする場合には投入負荷の総量などが厳しく規制されている。また、そうした規制が導入される前にフィヨルド奥部に立地した工場からの廃水などの影響が現在もなお問題となっているケースもある。逆に利点としては、沿岸のすぐ近くで水温や水質が安定した、栄養分に富む深層水を得ることができることが挙げられる。
ノルウェー周辺の海洋環境に関する調査・研究は、漁協資源や増養殖と関連する分野については漁業省の海洋研究所(ベルゲン)がその中心となっている。また、ノルウェーには4つの総合大学があり、ベルゲン大学海洋学科、漁業・海洋生物学科、トロムソ大学水産大学校などを中心として海洋の物理・化学・生物過程に関する基礎的な研究が行われている。トロンハイムにあるノルウェー理工大学(1995年にトロンハイム大学を改組)では、主に工学的な視点から海洋の利用・保全に関する基礎研究に取り組んでいる。1996年から開始されている海洋肥沃化のための基礎研究計画(MARICULT:Marine Cultivation、3.4 参照)の事務局は、この大学の生物実験所に置かれている。なお、ノルウェー理工大学の前身母体の一つであるノルウェー工科大学には、SINTEF(ノルウェー科学産業研究財団)という非営利目的の研究組織が1950年に設立され現在も活動を続けており、大学の教育・研究と産業界との間の人的交流や研究施設の共用などを進める上で大きな貢献をしている。
一方、海洋環境の保全や汚染状況のモニタリング、あるいは汚染された環境の回復のための調査・研究には、主に環境省やNIVA(ノルウェー水圏研究所)と呼ばれる非営利研究機関(いずれも本部はオスロ)などの研究者が従事しており、民間との研究協力も積極的に進められている。バレンツ海や北極海など極域の環境については、環境省の極地研究所(現在オスロからトロムソに移転中)が活動の中心となっている。さらに、ノルウェー沖では1969年に北海の陸棚域で原油が発掘されて以来、海洋における石油や天然ガスの開発が盛んに進められており(図7)、その環境への影響の評価や監視、油濁被害防止シ

 

 

 

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